石灰のおはなし
石灰の用途 ~ここにも石灰!~
「石灰」と聞くと皆さんはグラウンドの白線引きやチョークを思い浮かべるかもしれません。また、ホテルなどの大きな施設の床や壁に使われる大理石を想像する方も居ると思います。
実は、石灰は私たちの生活のいたるところで使われています。土木建築、鉄鋼、化学、食品、医薬、水処理、公害防止など、幅広い分野で活躍している石灰をご紹介します。
マップ上の赤いピンマークの分野で、
井上石灰工業の石灰が使われています。
■医薬・試薬での用途
カルシウム錠剤・注射液・錠剤・粉薬・歯科材料・人工骨・外科用固定包帯(ギプス)など
カルシウム化合物はカルシウムやリンの補給の他にも、注射液や内服薬の成分として多くの医薬品で使用されます。
また、生体用金属材料や錠剤などの表面コーティングにも使用されます。
■化学工業での用途
ガラス・陶磁器・ソーダ・漂白剤・カーバイド・紙パルプ・海水マグネシア・金属マグネシウム・石油化学・歯磨き粉・ゴム製品など
化学工業とは、原料を化学反応によって加工し製品をつくる工業のことです。私たちの身の回りにある家庭用品、事務用品、電化製品、ガラス製品などの加工製品はすべて化学工業でつくられたものです。私たちの社会基盤を形づくり、そして文化的な生活を支えている化学工業のどれをとっても、石灰をなくしてできるものはありません。
■建材での用途
大理石・石膏・漆喰(しっくい)・三和土(たたき)など
上記の建材の主成分は石灰です。大理石はエジプトのピラミッドやギリシャのパルテノン神殿などとても古くから使われており、現在も建物の内外装に使用されます。漆喰(しっくい)や三和土(たたき)の左官材料も日本の伝統建築であるお城などで使われており、こちらも大変長い歴史を持っています。
■公害防止での用途
排煙脱硫
火力発電所やゴミ焼却施設、製鉄所などで石油や石炭を大量に燃焼させた際に出る排気ガス中には、有害な塩化水素や硫黄酸化物が含まれています。これらの有毒ガスは人体に悪影響を与えることはもちろん、「酸性雨」の原因となり森林を枯れさせてしまいます。石灰はこれら有毒ガスの除去にも使用されています。
■食品への用途
こんにゃく・砂糖・豆腐・チューインガム・水飴・パン・かまぼこ・ソーセージ・調味料・寒天など多岐にわたる
石灰の主成分はカルシウムです。私たちの栄養素の中で不足しがちなカルシウムは、最近では多くの食品に添加されています。
また、食品製造の補助剤としても、こんにゃくの凝固、砂糖精製時の不純物除去、チューインガム、水飴中和剤、パン乳化剤の保存用、かまぼこやソーセージの強度向上、清涼飲料水への乳酸カルシウム、リン酸カルシウムの添加など広い範囲で使用されます。
食品関係で使われる石灰製品として、他には石灰が水と反応するときの発熱を利用した食品加温剤(清酒、弁当、しゅうまい、おでんなどを温める)と、石灰の吸湿効果を利用した食品の乾燥剤、吸湿剤があります。
■鉄鋼での用途
鉄・鋼(はがね)など
自動車、列車、飛行機、道路、橋など私たちの生活は多くの鉄鋼製品に囲まれています。
石灰はその鉄や鋼をつくる過程で重要な役割を果たします。
■土木での用途
セメント・コンクリート・骨材・アスファルト・土質安定処理・静的破砕剤など
セメント・コンクリートは土木建築用に私たちの生活にはなくてはならない重要な資材。石灰はこれらの製造原料として重要な役割を担っています。石灰は水分が多くやわらかい土を、力強い立派な土に改良する土質安定処理で使われます。道路や建物の基礎工事、埋め立て地の改良、空港滑走路の強化など広範囲で活躍します。石灰のめずらしい用途として静的破砕剤があります。古いコンクリート建造物や人家に近い場所にある岩石はダイナマイトで破壊すると飛び石や騒音、振動がおきとても危険です。静的破砕剤は石灰と水とが反応するときに膨張する特性を利用してコンクリートや岩石を安全に破砕する薬剤です。
■農業・畜産での用途
肥料・畜産糞尿処理・農薬・産卵ニワトリ飼料・乳牛用飼料・鳥インフルエンザなどの伝染病予防など
肥料の 4要素は窒素、リン酸、カリ、カルシウムです。
石灰質肥料は、作物にカルシウムやマグネシウムといったミネラルを補給し、土中の有機物分解を促す効果があります。同時に酸性土壌の中和改良も行われます。そして畜産業の家畜糞尿は、石灰を使って水分調製や殺菌処理をすることで窒素肥料やカルシウム肥料としてリサイクルされています。農薬の用途では、100年以上の歴史のあるボルドー液の原料に使用され、飼料としては、石灰の主成分のカルシウムを家畜に与えるためエサに配合されています。最近では石灰の殺菌作用を利用して鳥インフルエンザなどのウイルス伝染病予防にも使用されています。
■水処理での用途
上水道処理・下水道処理・廃液処理・抗廃水処理・汚泥処理など
浄水場では河川や湖沼、地下水などから取った水を浄化して安全な飲料水にして家庭へ届けています。この浄化行程のpHの調製、赤水の防止、汚泥処理で石灰が使用されます。
下水処理場では、石灰を凝集剤として使用し、汚泥を沈殿分離させます。これら沈殿物は石灰により脱臭、殺菌されて堆肥として生まれ変わります。工場の廃水や廃液には有害な重金属類が溶け込んでいます。石灰を使用して溶け込んだ重金属類を水酸化物として沈殿回収します。また、酸性の抗廃水を石灰により中和させます。河川・湖沼・沿岸海域・養殖場などに堆積した汚泥からは栄養分(きたないもの)が溶け出し、赤潮や青潮の原因となります。この水域に石灰を散布することにより、有機物の分解促進・リン及び重金属の固定・硫化水素の発生防止・アルカリ作用効果の持続がおき、赤潮や青潮の発生を防止できます。